「宮大工千年の智恵 語りつぎたい、日本の心と技と美しさ」松浦昭次

先日も少し話に出ましたが、とても良い本なのであらためてご紹介させていただきます。
1章 雀と大工は軒で泣く 鎌倉・室町に花開いた、日本的「美」の曲線
2章 木造建築に秘められた日本人の英知 なぜ古建築は千年の命を持ちえたか
3章 「木の文化」は、なぜ衰えつつあるか 文化を守る修理、壊す修理
4章 旅回りの「渡り棟梁」 古き良き”職人の世界”
の4章からなるこの本。
建築のことを知らない素人の僕が読んでも、昔の大工の技術の高さ、「千年の智恵」と言うものが良く理解でき、古い建物に込められている職人の技術と心意気が、とても伝わってきました。
サッカーの指導という仕事をしているからでしょうか。僕が特に感銘を受けたのは、第4章の職人「宮大工」について、語られている部分です。

  • 宮大工には手先の器用さも必要ですが、文化財の修理では器用さと同時に美的感覚みたいなものも大事です。建物を見て、どこに美しさがあるのか理解できないと困る。それが基本といってもいいかもしれません。・・・
  • 木材の変化だけでなく、江戸時代の規矩術のように手軽なマニュアルばかりの世の中では、大事なものをなくしていくことになると思いますね。マニュアルが悪いとは言いませんが、職人がマニュアルに頼るようになったらおしまいですよ。無心に木と向き合い、木材と向き合い、技術と向き合うから、新しいものが生まれてくるのです。・・・

また、本の中では職人技術の衰えが、そのまま「木の文化」の衰えにつながっているとも指摘があります。
どこかで聞いたような話です。
いまだに見えない、サッカーにおける「日本のスタイル」。
世界のマネも大切かと思いますが、古き良き日本の文化にも、そのヒントは隠されているように思います。