「リーダーシップの旅 見えないものを見る」 野田 智義 金井 壽宏(光文社新書)

  • リーダーシップとは何か。それは組織での役職名ではなく、早計にあるなしを断じることができない資質であるが、確かに存在し必要とされている。著者の1人である金井壽宏氏は、経営管理と組織行動の視点からリーダーシップを論じている学者である。一方の野田智義氏は、旧・日本興業銀行勤務、欧米の複数の大学での助教授経験などを経て、現在はリーダーシップを研究するNPO法人(特定非営利活動法人)理事長に就く。著者らは近年盛んなリーダーシップ論議について、「リーダーシップは先天的なものか、後天的なものかといった“神学論争”にはあまり意味がない」と一蹴する。後天的な環境がリーダーを育むと説き、「すごいリーダー幻想」に惑わされるなと指摘。類まれなるリーダーとして称えられる者たちは、自らなろうとしてそうなったのではないと断じ、彼らは信念を貫く「旅」を歩む中で、結果的にフォロワー(従事者・支援者)の共感を呼び起こしたのだと言う。

これまで、リーダーと呼ばれる人たちの著書、その方たちを描いた本は読んできましたが、このようにリーダーシップそのものに焦点を置いた本は初めて。
ほほぉ〜( ̄エ ̄)リーダーシップとはそう言うことなのね!と、膝を打つお話多数。
まずはさわりに、このお話をご紹介します。

リーダーシップは「見えないもの」を見る旅だ。ある人が、「見えないもの」、つまり現実には存在せず、多くの人がビジョンや理想と呼ぶようなものを見る、もしくは見ようとする。そして、その人は現実に向けて行動を起こす。
世の中ではよく、リーダーはついてくる人(フォロワー〉を率いる、リーダーシップはフォロワーを前提とするなどといわれるが、私はそうは思わない。旅はたった一人で始まる。
フォロワーは旅の途中で現れる。リーダーと出会い、一緒に旅をする。しかも、この時点で、しばしばリーダーは自分のリーダーシップには気づかない。見たいものを見、やりたいことをやり、自身が描く目標に向かって歩いているだけで、自分がリーダーシップを発揮しているとは意識しない。リーダーとフォロワーが、実現したい何かに向かって、ともに旅という時間を過ごすプロセスで、お互いの間には一種の共振関係が生じる。
決して一方的な関係ではなく、相互の影響がそこにはある。その中で、リーダーが見る「見えないもの」がフォロワーにも共感され、いつしかフォロワーの目にも「見えないもの」が見え始める。
そんなリーダーの行動がフォロワーに向けて醸し出す「フェロモン」と、フォロワーがリーダーに感じる賞賛によって、リーダーシップは結果として成立する。リーダーは、リーダーになろうと思ってなったわけではなく、「結果として」リーダーに「なる」のだ。

そうか〜、旅は一人で始まるのか〜。
二人で始めちゃだめ(-_-?)。
そんなことを考えながら、今一度、リーダーというのはある種の孤独を味わうことがあるんだろうなと、ふと思いました。
これまでとは少し視点の違うリーダー論。皆様も興味があれば、ぜひ。