「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」クリス・アンダーソン、小林弘人=監修・解説 高橋則明=訳

「世界的ベストセラー『ロングテール』の著者が描く21世紀の経済モデル」
「〈フリーミアム〉という新しいビジネスモデルを提唱し、ビット世界の無料経済に正面から取り組んだニューヨーク・タイムズ・ベストセラー」

なぜ、一番人気のあるコンテンツを有料にしてはいけないのか?
なぜ、ビット経済では95パーセントをタダにしてもビジネスが可能なのか?

あなたがどの業界にいようとも、〈無料〉との競争が待っている。
それは可能性の問題ではなく、時間の問題だ。
そのときあなたは、創造的にも破壊的にもなり得る
このフリーという過激な価格を味方につけることができるだろうか?

●無料のルール
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう

本が重くて、持ち運び候補になかなか挙がらなかったので、しばらく家に置いてあった本書。もっとはやく読めばよかったと少々後悔。
いや〜、面白かったです。
これがすべてというわけではないと思いますが、こういう概念で動いている世の中もあるということを知ることは、これからを生きる人間にとって必須であることと思いました。

デンマークのあるスポーツジムは、会員が少なくとも週に一度来店すれば、会費が無料になるプログラムを実施している。
だが一週間に一度も来店しなければ、そのつきの会費を全額納めなければならない。
その心理効果は絶大だ。毎週通うことで、自信がつくし、ジムも好きになる。
いつか忙しいときが来て、来店できない週が出てくる。そうすると会費を支払うが、そのときは自分しか責められない。
行きもしないジムに会費を支払うというありがちな状況とは異なり、このジムの会員は脱会したいと思うより、
もっとジムに通おうという気持ちを強くするのだ。
フリー・カンファレンス・コール・ドットコムは、電話の利用者ではなく、電話会社から料金をもらっている。
すなわち、無料で電話会議が開ける場を設けることで、その利用者に遠距離電話をかける機会をつくらせる。
それにより生じた電話料金について、電話会社からアフィリエイト報酬をもらっているのだ。
それぞれの場合で、賢い会社はお金の流れを逆にする。モノやサービスを無料にしたり、
他の会社が料金をとるものに料金を支払ったりする。これらのアイデアとハイテクは特に関係ない。
起業家が価格について創造的に考えたことでうまれたものだ。

研究者は二種類のチョコを売った。一つはスイスの高級チョコと知られるリンツのトリュフで、
もう一つはおなじみのハーシーのキスチョコだった。研究者はリンツのチョコに一粒十五セント(卸売価格の約半分)、
ハーシーに一セントという値をつけた。被験者は実に合理的な行動をとった。
ふたつのチョコの品質の差は、価格の差を補ってあまりあると考えた人が多く、
七三パーセントがリンツを選び、二七がハーシーを選んだ。
次に、両者の価格を一セントずつ下げることで、方程式の中にフリーを持ちこんだ。
リンツのトリュフが一四セント、ハーシーのキスチョコが無料だ。
すると、突然になんでもないキスチョコの人気が爆発し、六九パーセントの支持を得たのだ。
両者の価格差は一四セントで前と変わらないので、価格と品質の費用対効果も変わらないはずだった。
だが、無料が持ち込まれたとたんに、被験者の好みが逆転したのだ。

面白いですよね。
こんなことを知ってしまったら、企業やお店が提示する「価格」というものの根拠がとっても気になってしまいました。
楽しみが一つ増えたってことです。
本当に面白い本なので、機会があれば皆様も是非。