帝王学―「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫) 山本 七平

  • 組織の指導者はいかにあるべきか?敵の忠臣を登用せよ、部下の諫言を聞き入れよ、清貧の生活に甘んじよ―これらが『貞観政要』の教える行動鉄則だ。古来、為政者の必読書とされてきた名著を、現代のビジネスリーダーに向けて読み解いたベストセラー。

唐の太宗・李世民は、中国4千年の長い歴史の中でも、屈指の名君として知られ、唐王朝の「二代目」として、平和で安定した社会を築くことに成功した。その治世を後世の人々は、太宗の年号を取って「貞観(じょうがん)の治(ち)」と称えてきた。「貞観政要」は「貞観の治」をもたらした政治の要諦であり、その内容は、太宗と彼を支えた優れた家臣たちの問答集を中心に編まれており、その問答を通して、トップと部下たちの組織運営の真摯な姿勢と覚悟が余すところなく解き明かされている。歴代の天皇もこの書の御進講を受け、その数は十人以上にものぼり、明治天皇などはとりわけ深い関心を寄せられたともいわれる。いつの時代でも、組織の長であるトップやリーダーは重い責任を負っており、与えられた職責を果たしていくためには、それなりの覚悟が求められる。また、組織社会においては、上司と部下との好ましい関係は、永遠の課題でもある。

貞観政要」って、なぁ〜に〜(-_-?)な私にもとてもわかりやすかった本書。
物凄くためになり、そして心に響くお話ばかり。
太宗が部下の進言をとても大切にしていたからこそ生まれた「貞観政要」。

昔からの帝王を見ますと、困難な時、危機の時には賢者を任用し、部下の忠告も受けいれるものです。
しかし安楽な状態になりますと、必ず『寛怠を欲す』すなわち、気がゆるんで楽をしたいと思うものです。
安楽な状態に依存してこの『寛怠を欲す』になりますと、直言がうるさくなりますので、臣下もついつい恐れて何もいわなくなります。
そうなると、日に月に徐々にすべてが頽勢に向かっていきまして、ついに危亡に至ります。
聖人の『安きに居りて危うきを思う』理由はまさにこのためです。安らかにして、しかも常に警戒する。
これは実に困難だといわざるを得ません」。
孟子』に有名な「敵国外患なき者は、国恒に亡ぶ」という言葉がある。
一見矛盾するようだが、これを「競争なき独占は恒に滅ぶ」と読むと面白い。

有名なのはこちらの問答。

「帝王の業、草創と守文と孰れが難き、と」
魏徴
「新しい王朝が起こるのは、〔いわば『継承的創業』であって〕必ず前代の失政による衰え・混乱の後をうけ、そのようにした愚鈍で狡猾なものを打倒します。すると、人々は新しい支配者を推載することを喜び、一応、天下がこれに従います。これが『天授け人を与う』(『孟子』)であって、天からさずかり、人びとから与えられるのですから、それほど困難とは思われません。
しかし、それを得てしまうと、驕りが出て志向が逸脱します。すると、人びとが平和と安静を望んでいるのに課役がやまず、人びとが疲弊・困憊しているのに、支配者の無駄で贅沢な仕事は休止しません。
国の衰亡は、常にこれによって起こります。こう考えますと、守文の方がむずかしいと思います」と。

上記にもありますが日本では歴代の天皇、そして他には北条政子徳川家康が好んで読んだとされています。
続けることの難しさと、続けている人の静かな力強さを感じるこの頃。
「草創と守文と孰れが難き」
もちろんどちらも難しく大変なことですが、
今、自分が学ぶべきは「守文」。
事を始めるということは、社会に出て、たくさんの人に関わりを持ち、生きていくということ。
その、ことの重大さがようやく最近わかり始めているからなのかも知れません。
人生を供に歩んで行きたい本にまたまた出合えました。
皆様も興味があれば、是非。