「神の子どもたちはみな踊る」村上春樹(新潮社)

読みました。

  • 1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる・・・。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた ― 。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。

大震災をモチーフに描かれた短編集。
村上さんの伝えたいことはもっと深いことのはずなのに、かえるくんみたいな話がやっぱり大好きです。
あとは「アイロンのある風景」。
高校3年生で家を飛び出した順子。今は彼氏の啓介と同棲中。住み着いた茨城の町、焚き火を愛する不思議な男性「三宅さん」との出会い。
この作品で印象に残ったお話です。

  • 順子は焚き火の前ではいつも寡黙になった。ときどき姿勢を変えるほかは、ほとんど身動きひとつしなかった。そこにある炎は、あらゆるものを黙々と受け入れ、呑みこみ、赦していくみたいに見えた。本当の家族というのはきっとこういうものなのだろうと順子は思った。

何だか分かりませんが、心に引っかかり、緑のボールペンでぐるぐる巻きでした。
炎の中には優しさもあり、それでいて冷たさもある。
黙々と受け入れていることの所以でしょうか・・・。
この物語を読むと、海辺で焚き火がしたくなります。食いしん坊の僕はあわよくば焼き芋を・・・なんて。